薪割りの斧、柄が抜ける理由|木のこと。板場では濡らすもの、畑では乾かしすぎないもの
薪割りの途中で、斧の頭がすっぽ抜けて飛ぶことがある。
柄の緩みは、木が乾いて痩せるところから始まる。
薪割りの途中で、斧の頭がすっぽ抜けて飛んでいく事故がある。
人のいる方向に飛べば、大けがにつながる。
柄の緩みに気づいていても、次でいいかと後回しにしがちなところがいちばん怖い。
木は、切られて道具になったあとも動き続けている。
柄が抜ける理由
斧の柄は、鉄の頭に木を差し込んで、くさびで広げて固定してある。
木が湿っているうちは繊維が膨らんでいて、締まった状態が保たれる。
そこから少しずつ乾いていくと、木は目に見えないくらいの幅で痩せていく。
締まっていたはずの隙間が戻ってきて、頭がぐらつき始める。
車の中や、直射日光の当たる場所に置きっぱなしにしていると、この乾燥がいつもより早く進むらしい。
応急処置として水に浸けて木を戻す方法が紹介されていることがあるが、あくまで一時しのぎで、緩みはそのうち戻ってくるそうだ。
僕は自分で試したことがないので、伝聞として書いておく。
根本的な直し方は、くさびを打ち直すか、柄そのものを交換するかの二択になる。
板場では、使う前に濡らすもの
寿司屋の寿司桶は木でできている。
使う前に水にくぐらせて、しばらく置いてから米を合わせるのが基本だ。
乾いたままの桶に酢飯を合わせると、木のほうが一気に水分を吸ってしまう。
先に木を湿らせて満たしておけば、桶はそれ以上水分を欲しがらない。
使い終わったら、洗ってすぐにしまわず、風通しのいい場所で陰干しにする。
乾かしすぎても、濡らしっぱなしにしても、たがが緩んだり木が反ったりする。
ちょうどいいところを保ち続けるのも、道具の手入れのうちだ。
畑では、乾かしすぎないもの
鍬や鎌の柄も、緩んで抜けかけることがよくある。
炎天下に道具を置きっぱなしにすると、木が乾いて柄がぐらつきやすい。
道具は日陰にしまうもの、とよく言われるのはそのためだ。
使うたびに土の湿り気を吸って、しまうたびにまた乾いていく。
その行き来に耐えられる場所に置いておくことが、手入れの半分を占める。
柄が完全に割れてしまえば、木の部分だけ丸ごと交換するしかない。
そこまでいく前に気づけるかどうかが、道具を長く使えるかの分かれ目だと思う。
長距離では、荷物を締める側にいる
トラックの荷台では、木製のパレットや当て木がよく使われる。
荷台の中は季節や積み荷によって湿り気がかなり違い、締めたロープが時間とともに緩むことがある。
当て木がわずかに痩せただけでも、荷物全体の締まり方が変わる。
休憩のたびに荷台を確かめて、緩んでいれば締め直すのが基本だ。
木は、荷物を固定するための道具でありながら、自分自身もわずかに動き続ける素材だ。
キャンプでは、オイルを一度差しておく
柄の乾燥を抑える方法として、オイルを薄く塗る手入れがよく紹介されている。
蜜蝋や自然塗料を布に取って、柄の表面に薄くなじませる。
油そのものが木を強くするわけではなく、急な乾燥をゆるやかにするだけだと僕は理解している。
それでも、何もしないよりはいいと思う。
キャンプから帰ったら、道具箱にしまう前に一度だけ、柄を握って緩みを確かめる。
それだけで、薪割りの最中に頭が飛ぶ事故はかなり防げるはずだ。
止められないものと、付き合う
石や竹のことを書いたとき(焚き火で河原の石が割れる理由)、あれらは火に入れて初めて変化するものだった。
木は、切られて道具になったあとも、火に入れなくても変わり続けている。
土の湿り気を手で確かめるのと同じように(土を握ると、水の加減が分かる)、木も湿ったり乾いたりを繰り返しながら形を変えている。
板場でも畑でもトラックの荷台でも、やることは木を止めることではなく、動く分だけ付き合うことだと思う。
斧の柄が抜けたとき、直すべきなのはくさびだけじゃない。
木を乾かしすぎる置き場所のほうも、見直したほうがいい。
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