信号待ちで、片手が腰に伸びる。三つの仕事で、腰の痛め方は毎回違っていた
寿司屋の立ちっぱなし、畑の前かがみ、トラックの座りっぱなし。
同じ「腰が痛い」でも、効く対処は仕事の数だけ違っていた。
信号待ちで、気づくと片手が腰に当たっている。
押しているわけでもなく、ただ添えているだけなのだけれど、この癖だけは何年経っても抜けない。
板場では、立ちっぱなしの重さが腰に溜まった
寿司屋で働いていた頃、腰の痛み方は「疲れ」というより「重さ」だった。
朝の仕込みから夜の片付けまで、座る時間がほとんど無い。
立っているだけなら平気そうなものだけれど、同じ姿勢のまま何時間も動かないというのは、腰にとってはいちばん苦手な状態らしかった。
先輩に「休憩中は座るな、少し歩け」と言われたことがある。
当時は意地悪だと思っていたのだけれど、後になって、立ちっぱなしの後にすぐ座ると腰がかえって固まるという理屈だと知った。
体は止まっているようで、実は止まったこと自体に文句を言っていた。
畑では、前かがみの角度が腰に効いた
農業をしていた時期は、痛み方の種類がまるで違った。
立ちっぱなしではなく、前かがみの姿勢を繰り返す動きのほうがこたえた。
畝のあいだにしゃがんで、伸びて、また屈んで。
一回一回は軽い動きなのに、数を重ねると腰の同じ場所にだけ負担が積もっていく。
膝を先に曲げてから腰を落とすようにと教わって、それだけで一日の終わりの重さが変わった。
同じ「屈む」でも、どこから曲げるかで腰への伝わり方がまったく違うのだと、この時に初めて実感した。
トラックでは、座りっぱなしの振動が腰に残った
長距離を走る仕事に移ってからは、また別の腰と付き合うことになった。
今度は動かないどころか、何時間も座ったまま道路の振動を拾い続ける。
停めて外に出た瞬間、体がまっすぐ伸びずにしばらく丸まったままだったことを覚えている。
座面と背もたれの角度を少し変えるだけで、翌朝の重さがだいぶ違うと知ったのはこの頃だった。
腰当てを一つ挟むようになったのも、この仕事のときが最初だった。
三つの仕事で、腰の敵は毎回違っていた
立ちっぱなし、前かがみ、座りっぱなし。
どれも「腰に悪い」と一括りにされがちだけれど、実際に痛めた場所も、効いた対処もそれぞれ違った。
立ち仕事には歩く休憩、前かがみには曲げる順番、座り仕事には角度と当て物。
同じ道具を使い回しても効かないのは当然で、腰は仕事の形に合わせて違う顔を見せていた。
信号待ちで手が腰に伸びるのは、たぶんどの仕事の記憶もまだ体に残っているからだと思う。
いまはデスクで座っている時間が長いので、当時トラックで覚えた角度の付け方と、腰当てクッションのお世話になっている。
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