2026.09.23 泊まれる場所4,223 立ち寄りスポット59,693 営業中を確認したキャンプ場1,005 note を読む

マスクの選び方|板場・畑・トラックで、防いでいたものが全部違っていた

玄関の引き出しに、マスクが三種類も入っていた。
板場・畑・トラック、いまで、選ぶ基準がまるで違っていたことに気づいた。

玄関の引き出しを開けたら、マスクが三種類も入っていた。
薄手の白いもの、耳が痛くならない大きめのもの、ゴムの臭いがする使い捨ての厚手のもの。
どれも「マスク」で片づけていたけれど、選んでいた基準は場面ごとに全部違っていた。

板場では、匂いを閉じ込める道具だった

生魚を扱う仕事は、手だけでなく息にも気を遣う。
厨房でくしゃみをするわけにはいかないし、風邪気味の日は客前に立つ前に必ずマスクをつけさせられた。
選んでいたのは香りが移らない無香料のもので、蒸れて息苦しいと長時間の立ち仕事がつらくなるぶん、耳が痛くならない大きめのものを重宝していた。

厨房の中は火と湯気で暑いのに、マスクだけは外せない。
守っていたのは自分の体ではなく、目の前で握る寿司飯の方だったと思う。

畑では、土と薬から身を守る道具だった

畑仕事のマスクは、匂いより粉じんが相手だった。
耕したばかりの畑は土埃が舞い、農薬を散布する日は普段のマスクでは頼りなく、排気弁のついた防じんタイプに替えていた。
メガネをかけたまま作業すると曇ってしまうのが悩みで、鼻元にワイヤーの入ったものを選ぶようになったのもこの頃だ。

花粉の季節は、防ぐものが土から花粉に変わるだけで、マスクをつける理由自体は絶えなかった。
畑仕事は、空気そのものと付き合う仕事でもあった。

トラックでは、休憩のときだけつける道具だった

長距離の運転中は、正直マスクをつける発想がなかった。
一人きりの車内で誰かにうつす心配もなく、息苦しさの方が眠気に効いてしまう気がして外していた。

マスクが必要になるのは、決まって荷降ろしの現場だった。
倉庫の埃や、積み荷から漂う独特の匂いを吸い込まないよう、サービスエリアで買った適当な一枚を鞄に入れていた。
運転席では外し、体を動かす場所でだけつける。トラックの仕事は、その切り替えの連続だった。

いまは、いなくてもいい日にも持ち歩いている

デスクワーク中心のいまは、粉じんも匂いもほとんど気にしなくていい。
それでも満員電車やオフィスの人混みを考えると、鞄には一枚常に入れている。
選ぶ基準は結局、板場で覚えた「息苦しくないこと」と「耳が痛くならないこと」の二つに落ち着いた。

必要に迫られて選んでいたころとは違い、いまは備えとして選んでいる。
それでも基準そのものは、あの頃からほとんど変わっていない。

マスクは、何から自分を守るかを映す道具だった

板場・畑・トラック、いま。
同じマスクという道具で、守っていたものは毎回違っていた。

匂いを閉じ込め、粉じんを防ぎ、埃を避け、人混みに備える。
手を守る軍手について書いた話はこちらにも残している。顔を覆う小さな布一枚にも、同じくらいの理由が詰まっていた。

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