夜、部屋の電気を消すと、窓が鏡になる。外より先に、自分の顔が見える
昼は外を見るための窓が、夜になると自分を映す鏡に変わる。
いつからそうなるのか、考えたことがなかった。
夜、部屋の電気をつけたまま窓に近づくと、外がほとんど見えない。
かわりに、部屋の中と自分の顔がそこに映っている。
明かりを消すと、今度はさっきまで鏡だったところが、急に外の景色に戻る。
ガラスは変わっていないのに、明るいほうから暗いほうへは見えて、暗いほうから明るいほうへは映る。
昼のあいだは意識したこともなかったのに、夜になると窓の役目が入れ替わっていることに、あるとき初めて気づいた。
フロントガラスも、同じことをしていた
長距離をやっていたころ、夜の運転でいちばん気を使っていたのはメーターの明るさだった。
ダッシュボードが明るいと、フロントガラスに自分の手元や計器の光が映り込んで、外の暗がりが見えにくくなる。
だから夜間は照明を絞る。
窓は、内と外のどちらが明るいかで、見せるものと映すものを勝手に切り替える。
家の窓でも仕組みは同じで、夜に部屋を明るくしたまま外を見ようとすると、自分の姿にじゃまされる。
外を見たいなら部屋を暗くするしかなく、部屋を明るくしたいなら外を見るのはあきらめるしかない。
どちらか一方しか選べないところが、窓のおもしろいところだと思う。
レースカーテンは、見せないためではなく見るためにある
ミラータイプのレースカーテンを初めて知ったとき、外から見えなくする道具だと思っていた。
実際に使ってみて分かったのは、あれは「外を見るための」道具でもあるということだった。
昼のあいだ、外の光のほうが室内より明るい時間帯は、内側からは外がふつうに見えて、外側からは中が見えにくくなる。
普通のレースより光を反射する加工がしてあるぶん、この差がはっきり出る。
昼は見張り台のように外を見ていられて、夜だけ厚手のカーテンに切り替える。
一枚で済ませようとせず、時間帯で役割を変える発想のほうが、結局は楽だった。
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結露は、窓がちゃんと仕事をしている証拠
冬の朝、窓の下のほうに水滴がびっしり付いていることがある。
あれを見るたびに「窓が汗をかいている」ような気がしていたが、正確には、部屋の暖かい空気がガラスの冷たさで冷やされて、含みきれなくなった水分が出てきているだけらしい。
断熱の悪さというより、内と外の温度差が大きいほど強く出る現象だと知ってから、少し見方が変わった。
放っておくとカビの原因になるので、朝いちばんにワイパーで拭き取る習慣を続けている。
タオルで拭くよりワイパー一本のほうが早く、水も垂らさずに済む。
地味な作業だけれど、窓のまわりだけ先に片づけておくと、一日の始まりが少し整う気がする。
目隠しは、光を諦めない範囲で
道路に面した部屋の窓は、カーテンを閉めっぱなしにしたくなる。
それだと日中も薄暗いままで、電気をつける時間が増える。
突っ張り式のロールスクリーンを使うようになってからは、上げ下げひとつで「見えない」と「明るい」を切り替えられるようになった。
穴を開けずに取り付けられるものが増えているのも助かる。
賃貸だった時期はそれで諦めていたことが多かったが、いまはドライバーやフックを使わずに済む選択肢がひととおりそろっている。
窓の工夫は、ガラスそのものより、その手前にあるものをどう選ぶかで決まる部分が大きいと思う。
映るか、見えるか
結局、窓というのは光の量の差でどちらの姿を見せるかが決まるだけの、ただのガラスだ。
明るいほうにいる自分の姿は、暗いほうにいる誰かにはずっと見えている。
それを忘れて部屋の電気だけつけて過ごしていた時期が、たぶん長くあった。
夜、電気を消して窓の外が戻ってくる瞬間が、いまでも少し好きだ。
映っていた自分が消えて、代わりに外の景色が現れる。
どちらも同じ一枚のガラスがやっていることだと思うと、窓という道具は思っていたより働き者だと思う。


