氷は買うものではなく、扱うもの|寿司屋の氷の置き方をクーラーボックスで使う
氷は冷やすためだけの道具ではない。
温度を保つために置く、と考えると扱い方が変わる。
夏の朝、コンビニで氷の袋を買う。
レジ袋の中で角がぶつかる音がして、それだけで少し涼しくなった気がする。
僕は寿司屋で働いていたことがある。
魚を扱う店では、氷は買って入れるものというより、扱い方を考えるものだ。
ここではその一般的な考え方を、クーラーボックスに当てはめてみる。
氷は、置き方で働きが変わる
ネタを冷やすための氷は、ただ敷けばいいというものではない。
大きいまま置けば長持ちするけれど、当たったところだけが冷えすぎて身が白くなることがある。
細かく砕けば全体を均一に冷やせるかわりに、早く溶けて水が出る。
水が出れば味が抜ける。
だから砕き方は、その日の気温と、量と、次に手をつけるまでの時間から決める。
氷は冷やすためではなく、温度を保つために置く、という言い方がある。
冷やすのは冷蔵庫の仕事で、氷の仕事はそこから先だという理屈だ。
においを吸う、という厄介なところ
氷はにおいを吸う。
冷凍庫に入れっぱなしにした氷は、そこにあるもののにおいをうっすら持つことがある。
口に入れる氷と、冷やすための氷は分けておいたほうがいい。
家の製氷皿でも同じことが起きる。
作り置きの氷を麦茶に入れると、冷凍庫の味がすることがある。
気になるなら、口に入れる氷はこまめに作り直すといい。
運転席の氷は、休憩の合図になる
真夏の長い運転では、サービスエリアの自販機の氷入りのカップがありがたい。
運転席は、思っているより暑くなる。
日差しが同じ場所に当たり続けるので、腕の片側だけが焼けることもある。
氷をひとつ口に入れて、溶けるまで少し休む。
一人で長く走るときは、そういう小さな区切りがあるといいと思う。
クーラーボックスでは、溶けるまでの時間で考える
クルマで出かけると、氷はまた別の顔になる。
クーラーボックスに入れた氷が、二日目の朝にどれくらい残っているか。
それで旅の食事の組み立てが決まる。
残っていれば魚を買って帰れるし、溶けていればその日のうちに食べきるものだけにする。
ここで効くのが、さっきの店の考え方だ。
大きい塊は長持ちする。砕いたぶんは早く効く。
両方入れておいて、使い分ける。
遊びの道具でも、氷は同じ理屈で動く。
家では、夏のあいだだけかき氷の器械を出すのもいい。
同じ氷なのに、削り方が変わるだけで別の食べ物になるのが面白い。
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氷のいいところは、必ず溶けることだと思っている。
置いておけば減るし、使わなくてもなくなる。
だから、いつ使うかを先に決めることになる。
夏の予定を立てるのが好きなのは、たぶんそのせいだ。
溶けきるまでのあいだに何をするか考えるのは、旅の計画にちょっと似ている。


