手を見れば何をしてきた人か分かる、という言葉について
水仕事、畑、ハンドル。
仕事によって手の荒れ方はまるで違うし、手はよく喋ると思う。
手を見れば何をしてきた人か分かる、という言い方がある。
褒め言葉なのか、気の毒がっているのか、受け取り方の難しい言葉だ。
ただ、仕事によって手の荒れ方がまるで違うのは本当だと思う。
水の冷たさを覚えている手
寿司屋のような水仕事では、冬の手はどこかしら切れやすい。
米を研ぐ、魚を洗う、まな板を流す。
一日じゅう水に触れていて、しかも温い湯は使いにくい。
ぬるい水はネタを傷めるから、冷たいまま扱う。
指の関節のところが割れて、包丁を握ると開く。
ばんそうこうを巻くと感覚が鈍るので、巻かずに済ませる人もいる。
手が荒れていることのほうが普通、という職場はいまもあると思う。
土は洗っても、しばらく残る
畑仕事の手は、また別の荒れ方をする。
水ではなく、乾きで荒れる。
土は思っているよりずっと水を吸うから、素手で触っていると指の水分を持っていかれる。
夕方に手を洗っても、爪のふちの黒いところは何日か残りやすい。
あれが嫌でたまらない人もいるだろうけれど、僕は悪くないものだと思う。
その日どこで何をしていたか、手を見れば思い出せる。
記録を付けなくても、手のほうが覚えていてくれる。
ハンドルは、握った場所だけ硬くなる
長距離の運転では、荒れ方がまた変わる。
手のひらの、ハンドルを持つあたりだけが厚くなりやすい。
長い時間握っていると、そこだけ皮膚が守りに入るのだと思う。
運転の手は、切れたり割れたりはしにくい。
そのかわり、乾く。
エアコンの風がずっと当たっているからだろう。
運転席にハンドクリームをひとつ置いておくと、休憩のたびに塗れる。
机の仕事の手は、荒れにくい
キーボードを叩く仕事なら、水にも土にも触らないから、手は荒れにくい。
痛くない手は単純にありがたい。
ただ、外で焚き火をすると、手はまた別の負担を受ける。
薪や熱いものを触るときは、素手でやらないほうがいい。
軍手ひとつで火に近づくと、指先を焦がしやすい。
夜に塗るクリームと、持ち歩く小さいのと、火のまわりで使う手袋。
手の面倒を見るなら、この三つがあれば足りると思う。
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手はよく喋る、と思う。
話したくないことまで喋ってしまうのが困りものだけれど、それも含めて、その人の仕事の記録だ。