夏の駐車場で、僕は空きより先に影を探している
夏の駐車場に着くと、空いている場所より先に影を探してしまう。
トラックに乗っていた頃に覚えた癖が、いまも抜けない。
夏の昼、買い物に寄った駐車場で、僕はまず影を探す。
空いているかどうかより先に、屋根の下か、木の下か、建物の裏側かを見ている。
同乗者には、遠いところにわざわざ停める人だと思われている。
影は、じっとしていない
長い距離を走っていた頃、休憩で車を停める場所は影で決めていた。
ただ、朝に見つけた日陰は、昼にはもうそこにない。
太陽は東から南を通って西へ動くので、影も同じだけ回っていく。
二時間眠るつもりなら、いま影になっている場所ではなく、二時間後に影になっている場所へ停める。
建物の東側に停めて寝ると、昼過ぎには日なたのまん中で目が覚める。
西側に回しておけば、起きる頃にちょうど陰に入っている。
覚えてしまえば単純な話なのに、これを知る前は、暑さで起きるのは運が悪い日だと思っていた。
木の下と建物の裏では、涼しさの質が違う
同じ日陰でも、木の下のほうがはっきり涼しい。
葉が日ざしをさえぎるだけでなく、葉から水が出ていくときに周りの熱を持っていくからだと聞いた。
建物の裏は日ざしこそ防げても、壁とアスファルトが昼のあいだ溜めた熱がそのまま残っている。
夕方になっても足元が生ぬるいのは、たぶんそれだと思う。
木の下には木の下の事情もある。
樹液や鳥の落とし物で、翌朝の車がひどいことになっている日がある。
昼の二時間なら木の下、ひと晩置くなら建物側、と使い分けるようになった。
影は、持っていくこともできる
影は探すものだと思い込んでいたけれど、持っていくこともできる。
折りたたみの日傘を一本、車に放り込んでおくだけで、日陰のない駐車場から店までの数十メートルがまるで違う。
男が日傘を差すのは気恥ずかしいと思っていた時期もあったが、炎天下を歩いたあとの体力の残り方を知ってから、その気持ちはどこかへ行った。
停めるときにフロントガラスへ一枚立てておくのも効く。
ハンドルが熱くて握れない、という状態はあれでかなり防げる。
車の横に布を張り出せば、座っていられる影をその場に作れる。
探す、持っていく、作る。
影との付き合い方は、この三つに分かれるのだと思う。
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二時間後の影を見ている
暑い日に外へ出るのが嫌になるのは、暑さそのものより、逃げ場がないと感じるからではないだろうか。
影の位置が読めるようになると、外はもう少し歩ける場所になる。
今日も駐車場で、僕は二時間後の影を探している。